前回ご紹介し切れなかった私(sisi生島)がせっせと通う布屋さんともうひとつのとっておきの場所を今回ご紹介致します。

前回の2軒と同じくデンパサール・スラヴェシ通りにあるそのお店は『SAS』(サス)。
実はこのお店に通い出したのは比較的最近です。

最近とは言え…5-6年は経っていますね。

私がバイクを駐車する所からやや遠いのと、全体的にドレッシーなエレガントなレースや刺繍ものが多かったのであまり入る事が無かったのですがパトロールの際にはたまに覗くようにはしていました。ちょこちょこ通うようになったきっかけは、こちらも「代替り」にあるかもしれません。 昔はゴルバチョフ元書記長(古い!通称ゴルビーです)をかなり痩せさせたようなおじさんが仏頂面でお店の一番置くの番台(?)にどしっと座り、ニコリともせず「一銭ともまけないぜ」という言動でお客さんを寄せ付けない雰囲気がありました。が、この5-6年前頃からお店を似た顔の、しかしニコニコ満面の笑みで調子良くウロウロする若い男性が。明らかに息子さん!彼が陽気に、気軽に声をかけてくる。冗談ばっかりながら質問すると的確な答えが帰って来る。スタッフたちと一緒に動き、仲良い雰囲気はありつつも一目はしっかり置かれている。
その頃にちょっとレース生地などをたくさん使う事があったのもあり、頻繁に通い出す事に。

こちらもアラブ系の経営者。幾たびにお父さんが居る割合は減り、お店の雰囲気も明るくなって行きました。
今までお客さんも気軽にボスに冗談を言ったり出来なかったのが息子さんに変わってからはワイワイ交渉。
割引はしない時は一切しない。しかし多く買うと良いタイミングでウィンクしながら「ナオミは常連さんだからね、この数字にしとく!」なんて。たまにやって来るようになったゴルビー父さんもそんな様子を見て、見せた事の無かったような笑顔でお客さんと冗談を言い合っている!! ある日やって来たこれまた同じ顔なんだけど、また全然雰囲気の違う若者!なんと息子さんは双子でもうひとつの大きなお店をもうひとりが担当しているそうな。 お茶を夫と4人で飲む事があったのですが、冗談ばっかり言い合って、しかし「あぁ、プロだな」と感じる場面もしっかり。 「こりゃお父さんも安泰だ!秘訣を教えて欲しいものだ」と羨ましく思いました。

■お店の中にはバリ人女性が正装に着るブラウス(クバヤ)の生地もたくさん販売されています。レジ横に昔からある(いる?)マネキンさん。野球帽をかぶってる時もあります。

お客さんには畏れられていた(良いのか?)お父さんですが、跡取りはバッチリ育てていた!
こちらも「特に探してる商品は無く」ても「ま、息子の顔でも見に行くか」とついつい思ってしまうお店です。
お店の前を通っただけで気づいたら一番奥からお店から響きわたる大きな大きな声で「ナオミー!mampi-----------r!(立ち寄る、という意味。なおみ、寄ってけ~~~!)」なんて。恥ずかしいけれど、嫌な気はしませんよね。

そして続きます今回最後のお店はこちら。

実は布屋さんでは無い! しかし、ここもこの数年スラヴェシ通り、と言えば外せない私の憩いの場。

bhineka jaya』はこの辺りでは「コピバリのお店」と言えば大体通じると思います。
車の量も多く暑い埃っぽいこの辺りに置いて座って安くて美味しいコーヒーが飲め、インターネットも自動的に繋げる!!
なんて素敵なカフェ!?いや、カフェというのはちと違う。いや、似合わない!

軒先珈琲屋」と言う感じでしょうか?

ここはバリ島イチ有名なコーヒー屋さん。「地球儀と蝶」のマーク、バリ好きさんならきっとご存知の筈!です。
そこの一番最初の店舗であり事務所だそうです。
実はスラヴェシ通りでは無く、スラヴェシ通りと大通りが交差したところに老舗の風格たっぷりに、しかし敷居は低く地域に愛されて昔からここにあるのでしょう。

私のいつもの行動パターンはウブドからやって来てバイクを停め、すぐ近くのこのコーヒー屋さんで美味しいカプチーノを。
スラヴェシ通りの布問屋さんたちに突撃する前に「買う物リスト」をまとめる、もしくは復習する。

買う物が決まっててやって来る事がほとんどですが、新しいバッグの為にやって来る事もあります。バッグのデザインがあってそれに使えそうな生地を見に来る事もあれば、ただブラブラしてぐっと来た布からデザインが決まる場合もあります。

お店に来ると写真の様に数組のお客さんがいつも居るのですが、7-8割は「いつものメンバー」準、もしくは準々レギュラーぐらいの私にもその常連さんたちはまるで「お店の人」のように「おぉ、ウブドから今日もお疲れさま、今日は旦那さんは?じゃ、バイクで来たの?座って座って、はい、カプチーノね?」なんて言いながら隣の席を空けてくれる。

私が真剣に色サンプルなどを選んでいると「何してるのー?」なんて声かけて来そうで来ない。
ここでは仕事の合間に息抜き、お散歩?で来たりしてるのと同時に私のようにスラヴェシに仕事に来ているビジネスの人間も多いので、皆さん距離の取り方をしっかりわきまえていらっしゃる。

ここでお客さまと待ち合わせしたりデンパサールに居る専務kawiと落ち合ったり、布を引き渡したり…
まるで私の「オフィス」のように使わせて頂いている。あ、でも、みんなそうなんですね! 居心地の良いカフェってのはおしゃれなインテリア、素敵な音楽だけではなく、こういう風に「お客さんによって自由に、形を変えて心置きなくつかってもらえる場所」なんですね。

奥では制服を着た事務員さんたちと国内外に発送予定のコーヒーを箱に詰め積んでいる。
その横の歴史を感じるステンレスの箱にさっき煎られて、バリコピ用(お湯をそそいで上澄みを飲む)に細かく挽かれたばかりの熱々の豆の粉が入れられる。 それをさも美味しそうに覗き込みながらさっそく200g,300gと買って行く地元のお父さんたち。

歓迎されながらも、このずっと続いて来た歴史ある風景の中の小さな小さな一こまに自分が入っている事に歓びを感じる空間です。

このお店に来る度に大好きなハーヴェイ・カイテル主演の映画『SMOKE』を思い出すのです。いつか、誰かにここを舞台に素朴な映画を撮って欲しいな、と思い続けています。

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